アゼルバイジャンの首都バクーで国連気候変動会議(COP29)が開かれていた11月18日。約200カ国の政府関係者やメディアが行き交う会場の片隅に、高さ3メートルほどの銅像が置かれていた。

 銅像が表現するのは肩車をする姿の2人の人物だ。上に乗るのは、右手に正義を意味するてんびんを持った女神で、丸く太っている。下で支えるのはやせ細った男性。台座には「ダブルスタンダード(二重基準)」の文字が刻まれていた。

写真・図版
「ダブルスタンダード」と名付けられた銅像=2024年11月15日、バクー、市野塊撮影

 COPは年に1度、国連気候変動枠組み条約の締結国が集まり、気候変動対策を議論する場だ。

 議論の構図は「先進国対途上国」が多い。化石燃料で成長してきた先進国が、これまで使ってこなかった途上国にも化石燃料の削減を求めるためだ。特にアゼルバイジャンのような石油やガスの資源国にとっては、自国経済の否定に近い、厳しい要請となる。

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 女神である先進国が「正義」の名のもとに気候変動対策を主張する。一方で、途上国から資源を得て繁栄を続け、途上国の負担を軽減しようとはしない――。ダブルスタンダードと名付けられた銅像は、こうした皮肉を投げかけていた。

「恵まれた立場」からの要望

 作者はデンマークの彫刻家イェンス・ガルスキオさん(70)。「心の葛藤」を彫刻で表した。

 ガルスキオさん自身は肉は好…

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